リニン

そこはザルツブルクみたいな

昔栄えた中世の山沿いの地域の話

 

やはりそこにも昔ながらの権力者が住む宮殿があった

 

僕や他の人たちは何の為かわからぬままそこへ呼ばれていった

でもほのかにまともじゃない空気が漂っている

そう感じるのは一度ここで死んだからと錯覚した

 

会場には何十人か人が集まり、テーブルごとに6,7人集まっていた

 

いけすかない主催者のような男が挨拶をし

これからゲームをすると言う

 

一人ずつ、10問の問題を抱えている

周りにそれは見えないが

本人が遠回しにヒントを出すことで

周囲が答えを出すのを手伝う事ができる

 

そして制限時間100分以内に解答が全問揃わなければその人は死ぬ

というより、ノコギリで身体を切ったりして見世物にされる

 

死んでも魂が蘇る可能性はあるから、合議制の下で皆で話し合って、犠牲者1名を選ぶことも出来る

その場合は、犠牲者が生贄になるので他のメンバーは生き残る

 

そんなわけで皆、いち早く自分の問題を解いてもらおうと必死になった

あるいは誰なら生贄になってもいいか、と自分勝手な理屈で他人を犠牲者にしようと論理展開する奴もいる

 

呆れる

全員が救われるために、落ち着くよう促しても その場に冷静さを保たれることはなかった

 

そして僕はそれが2回目だと感じたから

何か罠があると思った

 

たぶん席ごとに音声が拾われていて

金持ちたちは別の会場で酒でも楽しみながら

僕たちが死を押し付け合うのを見ている

そう確信できる

 

 

時間が経つ

 

 

誰も解答しない

 

いよいよこのままだと全員が死ぬのだが誰も答えない

 

気づけば僕は昔住んでいた中学校の通学路に立っていた

そこに女の子がいた

 

女の子は僕に向かって言う

私は死んだことがある

あなたの解答を全部言うから、あなたは生きてほしい

僕は言い返す

君にも生きてほしい

だから君の問題を教えてほしい

なんとか二人で生き残りたいと

 

でも彼女は言わない

時間が少ない

 

通学路の境界線上が徐々に暗くなっていく

斧を持った豚のような男が僕たちにそこから向かってくるのがわかった

 

 

僕は彼女と逃げようとする

彼女は僕の問題の解答を

暗記していた答えを、口に出す

 

「冷静さを出したこと」

「湧き水に信じること」

「やかんの金の音」

泣きながら、彼女はその場に立ち止まり

僕の回答を全て言う

そんな言葉を10問すべて覚えるのに彼女は何度僕を思ったのだろう

 

 

彼女は暗闇の中に入っていった

次こそは僕と一緒に生き残りたいと

そう言い残して笑って殺された

 

僕は生き残ることが出来た。今回は痛みを覚えなかった。この「第一問目」では

 

そう思ったとき、僕は気を失った。

そう、どうせこのゲームに生き残りは要らない

享楽のためのお遊びだから

我々はいかに面白くドラマティックに死ねるか、それまで延々とこんな問に向き合い続けないといけない

だから私は目を閉じ苦しみを迎え入れようと思う

 

すると僕はまた目を覚ます

そこには見慣れた風景があった。

リニンを見た?と姉に聞く。

最後まで見てない、と姉も父も返す。

なんだそれ、と僕はがっかりして、あの恐ろしい映画のことを、ドラマティックに思い返した

生きるということ、死ぬということ

夢の臨死体験にそれを近く感じるのだ。