海沿いにある、20世紀末によく建ったホテルに何人かで、宴会を広げていた。

ある女の子が一人の男に執拗に追いかけられていた。彼女を庇うべく、手練手管を駆使してクレーンゲーム機の中に男を入れ込んだ。

それでもまだ追いかけようとするので、彼女が親から授かったというベンツを運転して、伊豆辺りから四面道とぶつかる環状8号線を走り続けていた。

すると後方を走っていた水素ガスを抱えるトラックが、バイクとぶつかりかけていた。瞬間移動ができるヘビースモーカーの男の人がそれを見て、時間を止めて僕らの車を爆発の瞬間巻き込まれない位置に避けてくれた。

彼は時間が間に合わないのかその能力を嫌っていたのか、爆散地そばの建物のバルコニーに立って爆発の瞬間を迎えた。

彼はこっちを向きながらタバコを吸い、じゃあね、と言った。下半身が無くなっていた。

その何年も後も、彼女は彼のために、よく吸っていたマルボロを、仏壇前に置いた。よく泣いていた。

ああ、俺が死んだ時はそんな真似はしてくれないんだろうな、と思って、少しだけ悲しかった